庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
強引に私の手を取り、どこかへ向かう千晃くん。しかもすれ違う女性がかなりの高確率で振り返るっていう。昔からかっこよかったけど、今は大人の色気も合わさってさらにいい男になった。
キレの長い目に、筋の通った高い鼻。髪は昔から色素が薄くて、それでいてさらさら。しかも180センチ近い身長があるんだから目立つに決まっている。
そんな完璧な彼が私みたいな平凡な女の子を連れているっていうのも、見られている要因の一つなのだろう。
156センチと中学の時からあまり変わらない背丈に、肩までの緩いウエーブヘア。目は二重でくりっとしているとよく言われるが、いたって普通のOLだもん。
「ここでいい?」
着いたのはさっき遥斗と待ち合わせしていたコーヒーショップ。私は手を繋がれたままうんと頷いた。
コーヒーを二つ頼むと、二人掛けの席に座る。日が落ちはじめ、周りは学校帰りの高校生や、大学生風の若者が占めていた。
「あの、この洋服代、必ず払うね」
ずっと気になっていたことを切り出すと、千晃くんはカップから口を離した後、かぶりを振った。
「いいよ。大した金額じゃないし。それより家の鍵をとられたことのほうがまずいな」
「え? どうして?」
キョトンとしながらそう言うと、目の前から大きな溜息が聞こえてきた。
「犯人がその鍵を使って入ってきたらどうすんだよ」
「あ! そうか!」
住所も名前もバレているかもしれない。そんなこと全然考えてなかった。ということは今日は家に帰れないってこと? どうしよう。カプセルホテルに泊まる? ネットカフェ? あ、でもお金もないんだった。再び絶望感に襲われる。