庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「椎花」
「千晃くん。今帰り?」
「あぁ。椎花はこんなところで何してんの」
そう言うと、椎花は悲しげに目を伏せた。いったいどうしたんだ? 友達と喧嘩でもしたのだろうか。
「こんなところにいたら熱中症になるぞ」
光を遮るものが一切ないコンクリートに囲まれた国道沿い。太陽が容赦なく照りつけるせいで、制服の袖から出る白い腕がほんのり赤くなっている。
いったいなにがあったからこんなところで座り込んでいるというんだ。
「あのね、友達からもらったヘアピン、この中に落としちゃったみたいで」
「ヘアピン?」
見れば椎花の足元にはU字溝があって、この中に落としたのだろうとすぐにわかった。
「この中に落ちたんじゃもう取れないだろ。諦めろ」
「大切なものなの」
「どうやって取るっていうだよ」
つい口調が激しくなりハッとする。椎花は半べそをかいていて、やばっ、と内心思った。
椎花に泣かれるのは弱い。それがなぜかはいまだ解明できずにいる。
他の女に「どうして好きだと言ってくれないの」とか「付き合ってくれなきゃ、学校来ない!」なんて言われても、全く心が揺さぶられないのに。泣こうがわめこうが好きにしろと思うのに。椎花の涙にだけはなぜか胸が痛くなる。