庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
第二章 波乱の同居生活
「なにそれ! 漫画?!」
月曜日のランチタイム。同期の彩子に週末の出来事を話すと、公共の場にも関わらず、思い切り爆笑されてしまった。
彩子のことだから心配や同情うんぬんより、明るく吹き飛ばしてくれるとは思っていたけれど、まさか爆笑するとは思はなかった。さすが、彩子だ。
「もう、ひとごとだと思って。大変だったんだからね」
もぐもぐと親子丼を頬張りながら反論する。彼女とは課は違うけど入社当時から仲が良く、毎日ランチを共にする仲。
そして大抵、雑居ビルの一階にあるこの和食屋と決まっている。お手頃なのに、どれも美味しいし、それになんといっても会社から近い。
私の勤め先は老舗文具メーカで、そこの人事部で働いている。
上京したばかりの時は右も左もわからず、戸惑うことの連続だったが、彼女がいてくれたからなんとかやってこれた。今では何でも話せるよき友人。遥斗との合コンをセッティングしてくれたのも、彼女だ。
「まぁでもよかったじゃない。遥斗なんかより、その幼馴染のほうがはるかにスペック高そうだし。で、いつ結婚するの?」
「彩子、人の話聞いてた? その幼馴染は代わりに来てくれただけ」
「でも結婚してもいいって言ってたんでしょ?」
「それは責任感じて言ってくれているだけだよ。婚活は一からやり直しってわけ。あー、本当ついてない」
思い出してまたうなだれる。そんな私を向かいから見る彩子はなんだか釈然としない顔をしていて、どうしたの? と問いかける。
「うーん、なんていうか。大の男が責任感だけで結婚してもいいなんて普通言うかなって、不思議に思って。このご時世、結婚をためらう男が多いっていうのにさぁ」
「たぶん保護者みたいな気持ちで、責任とんなきゃって思ったんだよ」
そう言うと、彩子はふ~んと口を尖らせた後、セミロングの髪をかき上げながらうどんをすすっていた。