庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
昨日だってあれから大家さんに連絡を取り、鍵を借りると、家まで荷物を取りについて来てくれた。何からなにまでお世話になりっぱなし。
今朝も起きたら朝食ができていたし、完璧な人間というものを目の当たりにした瞬間だった。千晃くんと結婚できる人はきっと幸せだろうなぁなんて、向かい合って朝食を食べながら密かに思っていた。
「しっかし、遥斗のやつ最低だよね。直前になって行方くらますとか」
突然彩子がグラスをテーブルにドンッと置き、声を上げる。
「まぁ合コンのときから軽いやつだなぁとは思ってたけどさぁ。まさかそんないい加減な奴だったとは」
「悪い人じゃなかったんだけどねぇ」
でも今どこが好きだったのかと聞かれたらなにも出てこない。要はそういうことなのだろう。
もう軽はずみに誰かと付き合ったり結婚したいなんて言わないようにしよう。また昨日みたいに人に迷惑をかけてしまう。
「で、親にはいつ言うつもりなの? 全部ウソでしたーって」
「それ……言わないで。今悩んでるとこだから」
現実を突き付けられ、頭を抱える。
千晃くんはしばらくそのままでいいじゃないかというけど、そういうわけにもいかないだろう。