庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

「あ、ねぇ、そういえばさっきここに来る前に見てたんだけど、この人見て。すっごくかっこよくない?」

 食事を終え、さぁ会社に戻ろうかというときに、彩子は持っていた雑誌を私に差し出してきた。

 そこには〝若き社長の仁義なき野望゛と書いてあって、あっ、と思った。これって……。

「27歳にして社長だって。しかも超イケメン! こんな人が合コンに現れないかなー」
「千晃くんだ」

 いつもの調子で彼の名前を口にすると、目の前の彩子が飛び上がった。

「はっ? 今何て言った?」
「だから、これがその幼馴染の千晃くん」
「えーーーーっ!!」

 彩子が叫ぶものだから周りが何事だとざわつき、一気に視線を集めてしまった。すみませんすみませんと、彩子の代わりに頭を下げると、興奮する彼女を宥めなんとか座らせた。

「う、嘘でしょう?」

 さすがにまずいと思ったのか、彩子が私に顔を近づけ小声で言う。

「本当だよ。ここに福岡出身、高宮千晃って書いてあるじゃん」
「まじ!? いいなぁ椎花。こんなかっこいい人と幼馴染で、しかも同居中だなんて。ねぇ紹介してよ」
「もしかしたら彼女いるかもしれないよ?」
「そしたら椎花と結婚してもいいなんて言わないでしょう」
「んー、そっか。じゃあそれとなく聞いてみる」

 そう言うと彩子はガッツポーズを決めていた。

 しかし千晃くん。雑誌に載るなんてすごいなぁ。記事を読んだだけじゃ仕事の内容はよくわからなかったけど、きっとすごく努力したんだろうな。本当に尊敬する。

 今朝一緒に食卓を囲んだ人とは思えなくなってきた。もう雲の上の人じゃないか。

 雑誌の中で、こっちを見つめる彼に触れながら、なぜか胸がざわつくのを感じていた。

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