庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
◇
「え? 今から?」
「うん……挨拶したいんだって」
今日は久しぶりに早く帰宅できたとういう千晃くんに、同僚の彩子が玄関のところまで来ていると告げるとちょっと困ったような顔をした。
千晃くんがそんな顔をするのも無理はない。だって面識もない女の子が急に会いたいと言っているんだから。誰だって困るに決まっている。
ことの発端は夕方私が昨日運び切れなかった荷物をどうしようかと愚痴ったことから始まった。
パソコンにくるくるドライヤー、朝晩急に冷え込み始めたからコート類。それに丹精込めて育てていたベビーリーフも置いたまま。
昨日は慌てていたからそれらまで考えつかなかったけれど、どれも必需品。どうやって取りにいこうかなぁと困っている私に彩子は、近くに住む弟に車を借りてくるから、それで運べば? と言ってくれ、私は彩子の提案に甘えた。
そしてここに着き荷物を運び出し終えると、すぐに帰るのかと思いきや、一目でいいから千晃くんに会いたいと、それは粘る粘る。しかも運がいいのか、すでに千晃くんも帰ってきていた。何度も急だからダメだと言ったが、ちょっとだけという彩子の圧に負け、今こうやって直談判している最中というわけだ。
彩子らしいというか、さすがというか。なかなか周到に計算されていると思う。彩子の企みに気が付かなかった私も私だけれど。