庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす



 千晃くんの手料理はどれもおしゃれで、この短時間で作ったとは思えないものばかりだった。

 野菜たっぷりのポタージュスープに、チキンのソテー、サラダなど。レストラン並みの料理が並んでいる。私も一応自炊はしていたけれど、こんなクオリティーが高いものを何品も作るなんて絶対無理だ。

「椎花と高宮さんて、いつからお知り合いなんですか?」

 千晃くんが作ってくれた夕食を囲み、彩子が積極的に話しかけている。合コンでもそうだ。いつも幹事を買って出てくれて、場を盛り上げてくれる。そして必ずと言っていいほど意中の人をお持ち帰りするのだ。

「いつからだろう。気が付いたらいつも金魚のふんみたいについてきてたよな」
「金魚のふんて、失礼な」

ワインを傾ける千晃くんを、ムッと口を尖らせ睨む。

「俺の記憶じゃ、椎花が5歳で、俺が8歳ってところかな」

 千晃くんが懐かしそうに言う。私も千晃くんと同じだ。お兄ちゃんと学校に行っているのを、幼稚園のバスから見ていたのを覚えている。

 私が小学校に上がってからは母に、兄と千晃くんと一緒に行くように言われ、二人が卒業するまでずっと一緒に通ったな。

 田舎のあぜ道で蛙を追いかけたり、秘密基地を作ったり。女の子の友達と遊ぶことより、二人といる方が不思議と楽しかった。

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