庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「もしもし、遥斗? 今どこ? よかった、つながって。心配したんだよ。あとどのくらいで来れそう?」
 
 まくしたてる様に質問をぶつける。すると向こうから、頼りない声が聞こえてきた。

「椎花、ごめん……俺行けない」
「えっ? 行けないってどういうこと?」
「俺、旅に出ることにしたんだ」
「いきなりそんなこと言われても、意味わかんないよ。今からでもいいからお願い来て」

 人目もはばからず懇願するように何度もそう叫ぶ。だけど遥斗は最後に「ごめん」とだけ言って電話を切った。それ以降、電話はつながらなくなり、ラインもブロックされ完全に拒否されてしまった。

 どうしていきなりこんなことになったのだろう。両親に会ってくれるって言ったのに。昨日まで普通だったのに。ひどいよ、こんなの。

 両親になんて言えばいいの? 楽しみにしていただけに、きっと悲しむに決まっている。二人の顔を想像しただけで、視界が滲んだ。



< 3 / 185 >

この作品をシェア

pagetop