庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

 もしかして付き合ってほしいって言っちゃった? 千晃くんはあー言っていたけど、彩子は強い女性だし、千晃くんが仕事が忙しくても寂しいなんて口にしそうにないし、美人だし。このまま押されちゃったら……。

「きゃっ」

 ぼんやりしていたものだから熱々の耐熱皿に手首に当たってしまった。

「椎花! 大丈夫?」

 流水で冷やそうと水道をひねったところに、千晃くんが血相を変え飛んできた。

「やけどした? 早く冷やせ」

 そして私の手を掴むと流水の中に突っ込んだ。

「いっ、た」
「大丈夫?」
「ちょっとヒリヒリする」
「俺がやればよかった」

 責めることなく、むしろ後悔の言葉を口にする千晃くん。私がドジだからいけないのに。そんな申し訳なさそうな顔しないでよ。

「病院いく?」
「いい。そこまでしなくても大丈夫」
「跡にならなきゃいいけど」

 言いながら、赤くなった私の腕をじっと見つめている。

 ふと真後ろから千晃くんの心臓の音がドクドクと間近聞こえていて、不思議に思い振り返ったところで、あっ、と思った。自分がどんな態勢でいるのか今頃気が付いた。やけに温かいと思ったら、千晃くんが後ろから覆いかぶさってるんだ。
 
 途端に恥ずかしくなって、緊張してきた。千晃くんの頭は私の真上に合って、私の背中と千晃くんの胸がぴったりとくっついている。どうしよう。鼓動が早い。お願い、静まって。

「椎花?」

 耳元で名前を呼ばれ、足元が小さ浮く。ダメだ、意識しすぎてうまく口が動かない。

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