庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

「あとで薬局に薬買いに行こうか」
「え、あ……うん」

 早く離れて。じゃないと心臓がもたない。しかも彩子がいるのに……。

「あの、私、そろそろ帰りますね」

 そこに彩子が様子を見に来て、慌てた私は咄嗟に千晃くんを押しのけてしまった。千晃くんも驚いたような顔をしている。

「あ、え? 帰るの? ラザニアできたよ」

 だけど取り繕うのもおかしい気がして、何事もなかったかのように彩子に声を掛けた。

「うん。ありがとう。でもちょっと用事思い出したから」
「用事? そうなんだ」

 珍しいなと思いつつ、クローゼットにかけていた彩子のコートを準備する。

「高宮さん、今日は急にお邪魔してすみませんでした」
「ううん、気を付けてね帰って」

 彩子はバッグを持ち頭を下げると、本当に帰ってしまった。

< 34 / 185 >

この作品をシェア

pagetop