庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
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「KT飲料のプレゼンは誰に任せましょうか」
桜庭が運転しながら、ミラー越しに視線を送ってくる。
「今選定してるところだ」
最近では任せてくれる企業が増え、経営は軒並み順調と言える。まだ社員は少数で知名度も低いが、世間に知ってもらうために努力は惜しまない。
だからあのインチキくさい雑誌の対談にも応じた。撮影の時、ポーズを取らされる俺を見て桜庭は手を叩いて笑っていたが、今はどんな手を使ってでもこの会社を大きくしたいと思っている。プライドと戦っている場合じゃない。
「着きました」
桜庭の声にハッとして、膝に置いていたパソコンから目を上げる。窓の外に視線を移せば、やっとのことで約束を取り付けた有名スポーツメーカーの本社前にいた。
今日が正念場だ。社運をかけた戦いが待っている。
「行こう。桜庭」
車を降り一歩踏み出した、その時。胸ポケットのスマホが震えた。ディスプレイを確認すると桜太だった。なんだか妙な胸騒ぎがした。