庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
第三章 戸惑いのプロポーズ
昨日食べそこなったモンブランを朝食代わりにし、千晃くんが出て行ったあと、私も家を後にした。
今日は大事な商談があるとかで、ご飯も食べずに出て行った千晃くん。見送る際、玄関で見た顔はどこか緊張気味だったようにも思える。
きっと大事な時期なのだろう。それなのに私を家に置いてくれ、邪魔になっているんじゃないかと、申し訳ない気持ちになる。
今日は少しでも疲れを癒せるように夕飯を作って待っていよう。千晃くんはなにが好きだったかなぁと、昔の記憶を辿りながら会社の自動ドアをくぐった。
「椎花! おはよ!」
入館証をかざしゲートを抜けたところで、彩子が背後から追いかけてきた。
「あ、おはよ、彩子」
「昨日はありがとうね」
「ううん、それより急用は間に合った?」
エレベーターホールに着き、階数が徐々にさがってくるのを眺めながら彩子に聞いた。
「え? あー急用ね。そうそう。そうだった」
だがその反応がいまいちで、どうかしたのだろうかと隣に視線を移すと、少し気まずそうに視線をうろうろと彷徨わせる彩子の姿があった。