庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
◇
「どうしたんですか? さっきから溜息ばかり吐いて」
隣に座る景山くんに声を掛けられハッとして顔をあげる。
「悩み事ですか~?」
爽やかな笑顔で覗き込まれ、ぶんぶんと振った。
ダメだダメだ、ここは職場だった。彩子が朝から変なこと言ってくるから、調子が狂いまくりだ。
「ううん、なんでもない。ちょっとボーっとしちゃってた」
「ふーん、小原さんがぼんやりするなんて珍しいですね。いつも真面目に仕事してるのに。トロイけど」
「最後の一言余計だから」
憎まれ口を叩く景山くんは一つ後輩でいつも私をからかってきたり、ふざけたことばかり言ってくる。完全に舐められている気がするけど、なぜか憎めない子。
サラサラの短髪に、サイドを少し刈り込んだ今時のヘアースタイルの彼は、くりったした目が印象的。一見チャラいように見えるが、しっかり仕事はこなすから感心する。
「先週頼まれてた社内研修の資料、チェックしておきましたよ」
「あ、うん。ありがとう」
そう言うと目の前のやりかけていた仕事に取り掛かった。
入ってみてわかったけど、人事の仕事というのは思っていた以上に仕事の範囲が広くて、それでいて難しい。給与計算、採用、異動、昇給など従業員の人生に大きく影響するから、緊張感もある。
働き方改革といわれているこのご時世、時折風当たりが強い時もあるし、それまでのやり方では通らないことが増えてきたと、先日課長がぼやいていた。
だけど最近は自分で判断してできる仕事が増えてきたから、やり甲斐も感じ始めている。