庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「今、市立病院にいるらしい。椎花、行くか?」

 行くかってそんなこと言われても……。

 まずなにからどうしたらいいの? 仕事は? 飛行機だってチケットがいる。

「もし行くなら、飛行機の手配は俺がするから。椎花はそのまま空港に向かって」
「で、でも……」

 頭が追い付かない。真っ白になってて、千晃くんの言っていることが入ってこない。

「大丈夫。俺も後から行くから」
「え?」
「本当は一緒にいってあげたいけど、どうしても外せない仕事があるんだ。でもそれが片付いたら必ず行くから」

 それを聞いて心がホッとする。

「うん……わかった」

 しっかりした声がやっと出た。千晃くんもその声に安心したのか、またあとでと言って電話を切った。

「ごめん、景山くん。私、早退する」
「どうしたんですか? 顔真っ青でしたけど」
「お父さんが倒れたって」
「えー! 大丈夫っすか?」
「うん、大丈夫」

 千晃くんの顔が浮かぶ。一瞬パニックになってしまったけど、今は不思議と落ち着いている。

 有給申請書を書き、課長のデスクに置くと、私は会社を飛び出した。

 パンプスを鳴らしながらタクシー乗り場までダッシュする。

 お父さん、お願い無事でいて。まだ私お父さんになにも親孝行できてない。花嫁姿だって見せてないよ……!

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