庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
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お兄ちゃんに連れられ病室を後にする。空港まで送ってくれると言うが、泣き疲れてフラフラ。
そんなんで東京まで帰れるのかよと、お兄ちゃんが心配そうにしているけど、お母さんと約束したし、這ってでも帰らなくちゃ。
病院の玄関を出ると、車を回してくるからここで待っているよう言われ、傍に置いてあったベンチに腰を下ろした。
次はいつ来られるだろう。お父さんとまた話せる日はくるのかな。眠るお父さんの顔を思い出してまた涙で視界が滲む。
そこにパタンと車のドアが閉まる音が聞こえてきて、ハッとしながら顔を上げる。お兄ちゃんが来たと思ったけど違った。目の前には黒いタクシー。しかもそこから慌てて降りてきたのは千晃くんだった。
「千晃くん」
病院の中へ一直線に入って行こうとしていた千晃くんに声を掛ける。するとベンチから立ち上がった私に気が付き慌てて方向転換し、こっちに向かってきた。