庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「そっか、悪いな。助かるよ。このまま帰して大丈夫か心配してたんだ」

 お兄ちゃん……。

「それはそうと千晃、お前本気で椎花と結婚するのか?」

 すると、お兄ちゃんが千晃くんを真っ直ぐ見つめ言った。

「そのつもりだけど」
「本気なんだな」
「あぁ」

 どこから演技で、どこまでが本音? 全然動揺を見せない千晃くんに、本当に結婚してしまうんじゃないかって、錯覚しそうになる。お兄ちゃんにいたっては、ちょっと怒り気味で、千晃くんを思い切り睨んでる。

「相変わらずシスコンだな、お前は」

 そんなお兄ちゃんを見て、千晃くんが薄らと笑いながら言った。

「はぁー? うるせーよ」 
「ほら、椎花のことになるとすぐムキになる」
「お前にまさか椎花を渡す日がくるなんてこれっぽっちも思ってなかったからムカついてんだよ! 付き合ってるなら言えよ! あーくそ」

 いつもの調子が戻ったように、お兄ちゃんが顔を真っ赤にしながら反論する。それが懐かしくて、ついふふっと笑ってしまった。

「椎花?」

 二人の声がはもる。さらにそれがおかしくて、また笑った。

「ごめん、なんでもない」

 あーやっぱりこのコンビ好きだ。さっきまでわんわん泣いていたのに、今じゃ笑ってる。前向きになってる。

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