庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
◇
千晃くんの家に着くと、初めて来た日よりなぜか緊張していた。あんな真剣な顔で話そうと言われると、やっぱり身構えてしまう。
しかも覚悟だって結局決まらないまま。ここに来てほんの数日だと言うのに、離れるのが惜しいとさえ思っている。
「あ、あの、千晃くん。ごはんどうする?」
「あーなんか適当にデリバリーでいいんじゃない」
スーツの上着を脱ぎながら、いつもと変わらない口調で言う。緊張しているのは私だけみたい。
「そうだね。何にしようか。ピザとか? あ、最後の夜だし、思いきってお寿司とか」
張り切った口調でキッチンに置いてあったメニュー表を眺める。と、なぜか千晃くんが近づいてきて、それを私の手から抜き取った。
「え? なに?」
「後でいいよ。それより、」
あー、そっか。先に話をしようってことか。
「わかった」
ダイニングテーブルに座ろうとすると、これもなぜか阻まれた。
え? ここじゃダメなの?
「椎花、こっち来て」
半ば強引にソファのところまで連れて行かれる。どうしてテーブルじゃだめなんだろう。千晃くん、いったいなにを考えてる? 全然思考が読めなくて変な緊張感が襲う。