庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「徐々に意識してくれたらそれでいい」
「でも……」
「絶対好きにさせるから」
千晃くんらしい発言に、何も言えなくなる。きっとこのまま一緒に居れば千晃くんのこと好きになると思う。でもその言葉に甘えていいのか……。
「俺は椎花に甘えられるほうが嬉しいよ」
また先手を打たれてしまった。思考が完全に読まれてる。
「だいたい俺だって椎花の焦る気持ちに付け込んでるわけだし、おあいこってところだろ?」
ニッと口の端を上げいつもの自信家な口調になる千晃くん。おあいこか……。
ふと、頭の中でお父さんやお母さん、お兄ちゃんの顔が浮かぶ。この結婚はもしかするとみんながハッピーになれる? それに千晃くんとなら今さらお付き合いする必要もない。
「あの、本当に私でいいの?」
「椎花がいい」
甘いセリフを言われ、それだけでまた胸がドキドキと加速した。
これは千晃くんだから?
わからない。だけどわからないまま私は結婚しようとしている。結婚してから恋愛を始めようとしている。
でもそれが正しいことなのか、間違っているのか、きっと始めてみなきゃわからない。
「こんな私でよければ、あの……よろしくお願いします」
千晃くんの膝の上でぺこっと頭を下げた。千晃くんは嬉しそうに笑ってこちらこそと言って、私を抱き寄せた。