庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
◇
「んんっ! おいしい!」
一口食べただけで懐かしい味が口いっぱいに広がった。これが私がずっと求めていた味。
「だろ? いつか連れてきたいと思ってたんだよ」
「私替え玉!」
「早っ!」
そう突っ込みながらクスクスと隣で笑っている。だけどそれすら気にせず夢中で箸を進める。懐かしくて、大袈裟だけど泣きそうになった。
「椎花の幸せそうな顔見てると、こっちまで嬉しくなる」
頬杖をつき、流し目でそんなこと言われると、ここがラーメン屋だってことを忘れそうになる。いちいちエレガントなんだよな。
「そういえば椎花の部屋、いい加減解約しないとな」
「うん、明日にでも大家さんに連絡しておくね。荷造りもしなくちゃね」
結婚後もこのまま千晃くんのうちで暮らすことになった。会社も近いし、うちより断然広いから。
「あとベッドも買い替えないとな。今のじゃ狭いよな」
「あ、うん……」
ベッドと聞いて耳が熱くなる。
実はいうと私たちはまだ寝室が別々。千晃くんはソファベッドで、私がセミダブルのベッドに寝ているという。いつ一緒に寝るようになるの? どのタイミング? なんて密かに疑問に思っている。
「指輪も買いに行かなきゃな」
「そうだね」
「うわぁ、やることいっぱいだな~」
言いながらぐっと伸びをする千晃くんは嬉しそうで、ちょっと可愛い。