庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす



「んんっ! おいしい!」
 
 一口食べただけで懐かしい味が口いっぱいに広がった。これが私がずっと求めていた味。

「だろ? いつか連れてきたいと思ってたんだよ」
「私替え玉!」
「早っ!」

 そう突っ込みながらクスクスと隣で笑っている。だけどそれすら気にせず夢中で箸を進める。懐かしくて、大袈裟だけど泣きそうになった。

「椎花の幸せそうな顔見てると、こっちまで嬉しくなる」 

 頬杖をつき、流し目でそんなこと言われると、ここがラーメン屋だってことを忘れそうになる。いちいちエレガントなんだよな。


「そういえば椎花の部屋、いい加減解約しないとな」
「うん、明日にでも大家さんに連絡しておくね。荷造りもしなくちゃね」

 結婚後もこのまま千晃くんのうちで暮らすことになった。会社も近いし、うちより断然広いから。

「あとベッドも買い替えないとな。今のじゃ狭いよな」
「あ、うん……」

 ベッドと聞いて耳が熱くなる。

 実はいうと私たちはまだ寝室が別々。千晃くんはソファベッドで、私がセミダブルのベッドに寝ているという。いつ一緒に寝るようになるの? どのタイミング? なんて密かに疑問に思っている。

「指輪も買いに行かなきゃな」
「そうだね」
「うわぁ、やることいっぱいだな~」

 言いながらぐっと伸びをする千晃くんは嬉しそうで、ちょっと可愛い。


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