庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
どうしよう。言い訳しなきゃ。だけど考えれば考えるほど頭が真っ白になっていく。
「ちょっと意外だなぁ」
「ち、違うの、その人とはつい最近別れたの。それに決して二股とかじゃないから」
じゃあ一体どういうことなんだと言われたら答えようもない。まず時系列が無茶苦茶だし、職業だって全然違う。どうにか取り繕いたいけど、益々墓穴掘りそうで口にするのを躊躇する。
「もしかして、なにか訳ありですか?」
疑うような視線を向けられ思わず俯く。影山くん、意外と鋭い。完全に見透かされている。
「政略結婚とか? それとも、無理やりお見合いでもさせられました?」
「ちがっ、そんなんじゃない」
「だいたいその人のこと、本当に好きなんですか?」
真剣な眼差しで問われ、思わず喉がコクンと鳴る。
千晃くんのことは好きだけど、恋愛感情とは違う気がする。だから結婚してから恋愛をしようって二人で決めたのだけど、そんなこと正直に話したところで他人には理解できないだろう。
「俺、まだ諦めなくてもいい感じですか?」
「へっ!?」
「今まで気持ちをひた隠しにしてきました。どうせ俺なんか相手にされないって。だから彼氏の話だって平気なふりをして聞いてました。でも訳ありの結婚なら、まだ脈がありそうなら俺、猛アプローチしたいんですけど」
「だ、ダメに決まってるでしょ!」
思わず大きな声が出る。だけど景山くんは涼しい顔を崩さない。それがますます私を狼狽えさせた。