庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「すごいね、千晃くん」
「全然だよ。まだまだ頑張らないと。実家の会社のこともあるし」
「え? それって?」
思わず前のめりなりながら言うと、千晃くんが少し天井を仰いだ。
「うちの呉服屋はさ、地元では贔屓にしてもらっているし今のところ業績もいい。でも50年後生き残っているかと言ったら、俺は無理だと思う」
「どうして?」
「経営陣が保守的だから。変わることを嫌っている。いや、恐れている。だからwebやアプリの導入を強く拒んでいる」
難しそうな表情で、眉根を寄せる。
そういえば千晃くんの実家の着物や織物は、ネットで見たり買ったりできないかもしれない。伝統的なものだからという理由もあるのかもしれないけど。
「でも俺は絶対につぶしたくないんだ。じいちゃんが苦労して築き上げてきた会社だから。なんとしても後世に残したい」
「千晃くん……」
「だから俺は今ここで頑張って功績残して、経営陣に認めてもらう必要がある。それに、三代目だからって言わせないためにも」
伏し目がちの目から熱いものを感じた。きっとここに来るまでたくさんの葛藤があったに違いない。強いな、千晃くんは。本当にすごい人だ。ずっと先の未来まで見据えている。私とは大違いだ。
「幸運なことに社員にも恵まれている。みんな優秀でストイックだ。まだまだのびしろがあるって確信してる」
空港で会ったあのクールで真面目そうな男性も、千晃くんの会社の人だったんだろう。私も千晃くんを支えられるように頑張らなきゃ。