庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「来客用の豆っていい香りですね」
「うん、インスタントとは全然違うよね」
「そういえばさっき女子社員が騒いでました。イケメンが会社に来てるって」
それを聞いてドキッとした。それ、まさかと思うけど千晃くんのことでは? それにもう会社に到着しているんだ。同じ社内にいるなんて、なんだか不思議な気分。
「へ~そうなんだ」
「あれ、小原さんはあんまり興味ないって顔ですね」
「な、ないよ。だって婚約者いるし」
「でも偽装結婚でしょ?」
さらっとそんなことを会社で口にする景山くんを、キッと下から睨んだ。まだこの人疑ってたんだな。だけどハッキリと否定できないのが悔しい。偽装とまでは言わないが、契約結婚みたいなものだから。
「そういうこと言わないで」
「どうしてですか? 愛もないのに結婚するんでしょ?」
「それ景山くんの妄想だから」
「愛のないセックスって女性もできるんですか?」
「はっ!?」
とんでもない発言に、思わず腰が抜けそうになった。そもそも会社だし、だいたいそんなこと他人に聞く? 誰が素直に答えるって言うの?
「変なこと言わないで!」
「単純に疑問だったので」
悪びれる様子もなく、澄ました顔でミルを引き続ける景山くん。本当にこの子は。とんでもないこと言いだすんだから。
「でも小原さんの弱み握ってると思うと、わくわくするなー」
「やめてよ、もう」
これ以上変なことを言いださないか不安になる。脅されたらどうしよう。彼が言いふらしたら? あー、なんでこんなことに。噂になったりしたら厄介だな。