庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

「相手は誰なんだよ」
「遥斗の知らない人だよ」
「名前だけでも聞かせろよ」

 威圧するように真上から低い声で浴びせる。きっと言ったところでわかるはずはないけれど、絶対に言いたくない。千晃くんには迷惑をかけたくない。

「あーもういいや。面倒くさい。とりあえずお前にかけた金、返して」
「え?」
「飯代に交通費。あと慰謝料払って」

 理不尽なことを言いだす遥斗に目を丸くする。低姿勢からの威圧。それからの脅しって。これが遥斗の本性? 自分がこんな人と付き合っていたと思うと途端に歯がゆくなった。

「100万でいいよ」
「そんなの、払えるわけないじゃない。それにお互い様でしょ?」

 思わず大きな声が出た。だけど遥斗も負けじと反論してくる。

「俺はすげー傷ついた。慰謝料もらって当然だろう」

 自分がしたことは棚に置いて、要求ばかり突き付けてくる彼に呆れてしまう。しかも「とりあえず1万でいい」と言って、私の手からバッグを引き抜こうとしてきたから、焦って紙袋で彼を引っ叩いてしまった。

「いって。お前人が優しくしてれば、つけ上がりやがって」

 ぎろっと睨まれ、無意識に後ずさる。どうしよう。本気で怒らせちゃったかもしれない。



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