庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

 ここは一先ず逃げよう。だけど、どこへ? 走ったとしてもきっとすぐに追いつかれてしまう。

 そうこう考えているうちに、手を掴まれてしまった。

「ちょっとこっち来い」
「やだ、やめて」
「うるせーな。さっさと歩け」
「やっ、離して!」

 強引に引きずられそうになっていると、

「その手を離せ」

 突如聞き慣れた声が背後から届く。その瞬間、全身でホッとするのを感じた。

「誰だよお前」

 遥斗が怪訝そうな顔で見上げた先には千晃くんがいて、一気に目頭が熱くなった。

「俺は彼女の婚約者だ」

 そう言って遥斗から私を取り返すように肩を抱くと、背中へ隠すように回す。千晃くんの背中が頼もしくて、無意識に顔を寄せた。

「あーあんたが椎花の婚約者? 知ってます? その女、二股かけてたみたいですよ。俺と、あんたと」

 遥斗がケラケラと笑いながら千晃くんに話すのが聞こえる。

「やめたほうがいいっすよ、そんな女」
「これ以上彼女を侮辱するのは俺が許さない」
「へーそんなビッチ女の肩を持つんだ」

 耳を塞ぎたくなるような言葉。悔しくて唇を噛みしめる。

 

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