庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
「なぁ婚約者さん。そいつ、いつもへらへらしてて、人の機嫌ばっかうかがってるでしょ? つまらない女だと思いません?」
「黙れ」
「俺はあんたに忠告してやってんの。まぁ、そんな女もう興味ない……いって」
「黙れって言ったのが聞こえなかったか?」
すると千晃くんの聞いたこともない冷たい声が、耳の奥をつつくように届いた。
「いてーよ、離せよ」
よく見ると千晃くんが遥斗の手をひねりあげている。遥斗は痛そうに苦痛で顔を歪めていた。
「彼女に対する発言、全て撤回しろ」
「いてーよ、なんなんだよ。暴力振るわれたって訴えるぞ」
「あー好きしたらいい。こっちは君を婚約不履行で訴訟の準備をしているところだ」
「は? 婚約不履行? なんでそうなるんだよ」
「彼女は君に約束を破られ傷ついた。ましてや彼女の両親までも裏切ったんだ。訴えられて当然だろ?」
千晃くんの発言に遥斗が黙る。
「そろそろ自宅に訴状が届くと思うよ。こちらも弁護士をつけて真っ向から戦うつもりだからそのつもりで」
そんなの嘘だとわかっているのに、千晃くんの冷静沈着な姿勢に私までも息をのんでしまう。遥斗もすっかりおとなしくなり、返す言葉が見つからないようだった。