庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「……わ、わかったわかった。わかったから、手離して。俺が悪かったって。だからその裁判とか面倒なのは勘弁して」
「じゃあ二度と彼女に近づかないとここで約束しろ」
「しますします。二度と近づきません」
「破った時にはそれなりの対処をさせてもらうからな」

 そう言うと千晃くんは遥斗の手を離した。そして私の肩を抱き、そこに車を待たせていると言って歩き始めた。

 遥斗はその場で項垂れていた。ちょっとかわいそうになるけど、でもこうでもしないときっとしつこく金銭を要求してきただろう。

「椎花、大丈夫?」
「うん……ありがとう。だけどどうしてここに?」
「やっぱりついて行けばよかったって後悔してたんだ。だから仕事の合間に警察署に寄ってもらった。警察署に行くとまた色々聞かれるだろうし、事件の時のことを思い出して辛いんじゃないかって思って」
 
 そうだったんだ。そこまで気にかけてくれていたんだ。

「ありがとう千晃くん。千晃くんの言う通り実はちょっと悲しくなっちゃって。だって見て、このバッグ。ぼろぼろなんだよ?」

 小さく笑いながら紙袋に入ったバッグを見せる。すると千晃くんが私を引き寄せてきた。

「無理して笑わなくていい。俺の前では強がるな」

 穏やかな声色に胸が熱くなる。しかも何でもお見通しだから、少しも誤魔化せない。

「怖かっただろ。守ってあげられなくてごめん」

 そして私の髪をゆっくりと撫でた。その手がどこまでも優しくて、私の目からは勝手に涙が溢れていて、暫く止まらなかった。



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