庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
待たせていた車に乗り込むと運転席にいた桜庭さんが、ミラー越しに私に頭を下げた。
「とりあえず彼女を自宅まで送っていく」
千晃くんが私の隣で桜庭さんにそう告げる。桜庭さんはわかりましたと端的に答えると、何も聞かずに車を発進させた。
もし千晃くんが来てくれなかったら今頃私はどうなっていなのだろう。そう思うと怖くなった。
「千晃くん、ごめんね」
「どうして椎花が謝るの?」
「だって変なことに巻き込んじゃったから」
「それはいいよ。それよりあんな男に椎花のこと語られてすげー腹立った」
そこ? ちょっと論点がずれていて思わずふふっ笑ってしまった。しかも思い出してまた怒っている。
「椎花はさりげない気遣いができる優しい子だ」
「なに? 急に」
「いつもニコニコしている椎花に、俺は毎日癒されてる」
殺し文句の連発に顔が熱くなる。遥斗がさっき私のこと散々けなしていたからそう言ってくれているの? 桜庭さんがいるというのに、千晃くんてば。でも素直に嬉しい。
無性に彼に触れたくなった私は、ぴとっと体を密着させ彼の肩に頭を預けた。さっき遥斗に肩を掴まれた時はひどく嫌だったのに、今は全く真逆なことを思っている。
千晃くんはそんな私を不思議そうに見た後、よしよしと頭を撫でてくれた。それだけで嬉しくなって、心がほかほかしてくる。
あー私、千晃くんが好きなんだ。