幸せの触り方
それからずっと私はショウを想ったまま
愛を伝えないまま、時間だけが過ぎた。


ショウは離れていった。
一歩ずつ一歩ずつ。
私はここにいるのに…


時間は止まらない。
卒業が近づいていた。
ショウは公立高校に進学。
私は私立高校に進学。

違う道を歩む事は決まっていた。


それでいいんだと、これが1番諦められる事なんだと思っていた。

ショウを想う気持ちが、こんなにも大きいものだと気付いていなかった。





卒業式の後、
校庭で写真をとる人がいたり
後輩にボタンをあげる男子がいたり
後輩にスカーフをあげる女子がいたり

…私は一人図書室の前の階段に座った。


ショウと初めてキスをした場所。

ショウに好きだと、きちんと伝えたかった。

ショウが何処かへ行ってしまう前に、もっと抱きしめておけば良かった。

ショウのすべてを忘れないように、この目に焼き付けておきたかった。


あげたらキリがないくらいの後悔。涙が止まらなかった。









でも、今日で何かが終わる。
そんな気がした。

なにが終わるのかわからないけど、
幸せが今、私の手のなかにないと感じた。
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