今も、強がりな君が大好きです
「私はあなたに会いたくなる」

中瀬古奏(なかせこかなで)は校舎裏で歌を口ずさむ。遠く離れた日本にいる家族に思いが伝わってほしいとSincerelyを歌った。

奏がいるのは、日本から遠く離れたオーストラリア。インド洋と太平洋に囲まれた国だ。シドニー・オペラハウスやグレートバリアリーフ、カンガルーやエアーズロックで有名な国。

奏は高校一年生。留学生としてこの国に来ている。きっかけは、母の言葉だった。

「色々な世界を見て来なさい。そうすればきっと、あなたは素敵な人になれる」

奏の母は、奏と同じくらいの歳の頃にアメリカに留学していた。そこで様々な人や文化に出会い、日本に帰国した。

「え〜、海外留学なんて怖いよ〜」

そう言う奏に母は言った。

「奏が思うより、世界はずっと広いものなの。教科書には書かれていないこと、誰も教えてくれないことが山ほどある。それを奏に知ってほしい」

奏は母にそう言われ、叔母が住んでいるオーストラリアへやって来たのだ。高校はオーストラリアの学校へ通う。
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