今も、強がりな君が大好きです
そして、気がつけば歌を口ずさんでいた。故郷を思って、家族を思って、オーストラリアにはない日本語で声の限り歌う。

歌い終わるまで、奏は歌を聴いていた人がいることに気が付かなかった。

「You sing very well(お前、歌うまいな)」

奏の後ろに人がいた。白いシャツの上に赤いカーディガンを羽織り、ダボッとした黒のクロップドパンツを履いている。短い茶色の髪に琥珀色の目の顔の整った男子だ。

「セ……thank you(あ、ありがとう)」

歌っていたのは日本語で、彼に歌詞がわかったわけではないだろう。しかし、褒められて嬉しくない人はいない。

奏がお礼を言うと、男子はハッとした顔になって早口で言った。

「べ、別に本心じゃないからな!お世辞だからな!俺も音楽好きで、たまたま聞こえただけなんだからな!」

彼は、奏と同じクラスのオリバー・エイトールだ。最初に奏に話しかけてくれたクレア・デラニーが教えてくれた。
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