【完】昔の話
私は…
そして当日。
ミリーは神への供物として、
山の神殿に連れていかれました。
「ミリー…。
私はっ!私の娘を!
誇りに思う!」
お父さんの声は少し、掠れていました。
ミリーは、そんなお父さんの手を握り、
「お父様、私ミリー、
務めを全うしてきます。
今までありがとうございました。
…大好きです。」
ミリーは笑顔で言いました。
お父さんはミリーに背を向け歩き出します。
お父さんの背は小さく、
それがもっと小さくなっていきました。
それ以降、
ミリーがお父さんを見ることは、
ありませんでした。
神殿に残されたミリーは山の寒さに震えつつ、
だんだんと目を瞑っていきました。
あぁ、これで終わり。
定期的にくるあの苦しみも、
もう味わわなくていい。
お父さんの苦しそうな顔も、
見なくていい。
笑顔で遊んでいる兄妹達を、
見なくていい。
そう、見なくていいの。
見なくて…
もう…見れないの?
私に向けられたあの優しい笑顔達を。
もう感じられないの?
私を撫でるあの暖かい手を、
抱きしめられた時のあの安心感を。
ミリーは気付くと泣いていた。
そして、静かに息を引き取った。