世界が崩れるその前に、そっとぎゅっと、抱きしめて。
「あのさ、」
「ん?」
「言いたかったことがあるんだけど」
「言ってもいいよ」
「……俺、ずっと杏奈のことが好きだった」
「“だった”って…過去形?」

静かに首を振る兄。

私と、同じ気持ちだったんだ。

「私も、好き。血の繋がらない兄だって知った時、安心したっていうのが正直な気持ち」
「俺たち、両想いだったんだな」
「そうだね」

今更、こんな想いを伝えても、
あと少しでこの世界は終わる。

それなら、全て伝えてしまった方がいいの?

「私の夢、叶えてくれてありがとう」
「突然どうした?」
「実は、“お兄ちゃんと”テカポ湖に行きたいっていうのが本当だったの。だから、今こうして二人で星をみれて嬉しい」
「よかった。杏奈の笑顔が近くで見れて、俺も幸せだよ」

思い残すことは、もうないよ。

お兄ちゃんとテカポ湖に来て、星をみれたし、お兄ちゃんに告白できた。
あとは……
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