優等生の恋愛事情
僕はため息交じりに頬杖をつくと、窓の外へ目を遣った。

青い空に白い雲、輝く太陽。

広がる夏空に、彼女との記憶がふと蘇る。


“助けてもらってもいい……?”


困った表情で僕を見上げた彼女の顔が、鮮やかに目に浮かんだ。

群れることを好まない彼女は一人でいることが多かった。

あまり淋しそうには見えなかったけど、どこか所在なげで、まるで心は別の場所にあるような……そんな印象だった。


物静かで、頭がよくて、しっかり者。

教師からもクラスのみんなからも頼りにされる存在。

でも、賑やかな輪の中に彼女がいることはあまりなかった。

孤立しているのとは違うけど、いつも周りと一定の距離をおいている感じがあった。


そんな彼女が僕だけに見せてくれた素顔。

ちょうど一年前の今頃、ある夏の日の出来事。

おかしくて、楽しくて、ちょっとバカで……。


二人で笑い合ったあの時間を、君は覚えてる?


君は今どうしていますか?

誰かを想っていますか?

君の隣は、まだ空いていますか?
  
  
  
 
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