優等生の恋愛事情
「溝口さんて、他の女子たちとは何かちょっと違う雰囲気あったじゃん?」
「それは……うん」
学校では極力自分を出さないようにしていたみたいだし。
かといって、周りにむやみに同調したりもしないのだけど。
物静かな雰囲気が、他の女子たちと一線を画しているところはあった。
「俺、かまととぶる女子って苦手」
「いきなり何だよ……」
「いや、溝口さんてそういうタイプじゃなさそうだよなぁって」
「だ・か・ら!」
「おまえ、どっちがいい? 二者択一な」
「いやいや何これ、ちょっと待ってよ!」
ロクちゃんはイスから降りて胡坐をかくと、妙に真剣な顔で僕にたずねた。
「“え~、わかんな~い”などとのたまう自称清純派と、“エッチな想像しちゃった”と素直に白状する正直者、どっちがいい?」
この男は、いきなり何を真剣に聞いてくるかと思えば……。
「どうよ?」
「後者かな」
って、真剣に答えるなよ、僕!
あーもう、困るよ。
本当に困る。
「僕は“毎秒”なんて考えてないからね」
「彼女のこと毎秒考えてたら同じじゃね?」
「同じじゃないよっ」
彼女のこと――好きなのに? 好きだから?
僕はいつまで冷静でいられるのだろう。
いや、ひょっとしてもう冷静じゃない???
「僕、滝とかに打たれたい気分……」
「アホか。滝行なめんな。ま、俺もしたことねえけど?」
「とりあえず、英語の予習に全力注ぐよ」
「おいこら!俺に数学教えにきたんじゃねえのかよ!」
僕は武士じゃないし。
ましてや、聖人でもなければ天使でもない。
でも、彼女を大切に想う気持ちは本当なんだ。
どんな君も大切だから。
どんなときもそばにいたい。
もっと君を知りたくて。
もっと君に近づきたくて。
大好きなんだ、寝ても覚めても君のこと。
だから――。
不埒な僕を君は許してくれますか?
全部とは言わないから、少しだけでも……。