優等生の恋愛事情
◇カルピスの味
夏休みも終わり、今日から新学期。
といっても、休み中もわりと学校へ来ていたし。
久しぶりだの、新鮮だの、そういった感想はわいてこない。
でも、同時に緊張感や憂鬱感もとくになかった。
中学の頃は、新学期が始まるのが憂鬱で憂鬱でしかたがなくて、お腹が痛くなったりしてた。
けど、今はぜんぜん。
学校が始まるからって一生懸命に気持ちを奮い立たせる必要もないし。
むしろ、友達に会えるのが嬉しいくらい。
2学期はどんなことがあるんだろう? そう考えると、楽しみだなって素直に思える。
(それに、今日は……)
朝の教室は明るい活気にあふれ、いつもの仲良しクラスの雰囲気だった。
「溝口、そのでっかい箱は何なわけ?」
「これ? 金魚鉢だよ?」
机の脇に置かれた広いマチつきの紙袋。
丈夫な箱の中には2匹の金魚がゆったり泳げる金魚鉢が入っていた。
「なぜに学校に金魚鉢???」
不思議がるハルピンの質問はそのままに、私は浮かれて言った。
「見たい? 見たい?」
「いや、見せたいっつうなら拝見するけど」
はしゃぐ私を見て、ハルピンが曖昧に笑う。
お祖父ちゃんの家からもらってきた金魚鉢は、本当に何の変哲もない金魚鉢。
箱から出したそれを、ハルピンはしげしげと眺めた。
「はぁー、確かにどっからどう見ても金魚鉢だあね」
「いいでしょお?」
「ま、いいんじゃない?」
「何その興味なさそうな言い方……」
私がむすっとすると、ハルピンは「あんたねぇ」と呆れて笑った。
「それより、なんで学校に金魚鉢なんて持ってきてんのって話でしょーよ」
「何でって……諒くんにあげるから?」
「はい?」
「これ持って、諒くんの家に行くんだよ」
一瞬だけ間があって、それからハルピンは盛大に驚いた。
「ええっ!? 何、いきなりっ……」
「何その食いつきかた。金魚鉢にはぜんぜんだったくせに」
そりゃあまあ、当たり前だろうけど。
「溝口、彼家デートじゃん!」
「うん」
「“うん”ってあんた……」
「いや、わかるよ。ハルピンの言わんとすることはわかるよ、うん……」
私だって何も思わないわけないじゃない。
「あーもう、そろそろ先生来ちゃうじゃんっ。詳しい話は帰りに聞くから!」
「うん」
とりあえず今は時間切れ。
ハルピンからの尋問(?)は、帰りに約束していたファミレスランチの時間へ持ちこされた。
といっても、休み中もわりと学校へ来ていたし。
久しぶりだの、新鮮だの、そういった感想はわいてこない。
でも、同時に緊張感や憂鬱感もとくになかった。
中学の頃は、新学期が始まるのが憂鬱で憂鬱でしかたがなくて、お腹が痛くなったりしてた。
けど、今はぜんぜん。
学校が始まるからって一生懸命に気持ちを奮い立たせる必要もないし。
むしろ、友達に会えるのが嬉しいくらい。
2学期はどんなことがあるんだろう? そう考えると、楽しみだなって素直に思える。
(それに、今日は……)
朝の教室は明るい活気にあふれ、いつもの仲良しクラスの雰囲気だった。
「溝口、そのでっかい箱は何なわけ?」
「これ? 金魚鉢だよ?」
机の脇に置かれた広いマチつきの紙袋。
丈夫な箱の中には2匹の金魚がゆったり泳げる金魚鉢が入っていた。
「なぜに学校に金魚鉢???」
不思議がるハルピンの質問はそのままに、私は浮かれて言った。
「見たい? 見たい?」
「いや、見せたいっつうなら拝見するけど」
はしゃぐ私を見て、ハルピンが曖昧に笑う。
お祖父ちゃんの家からもらってきた金魚鉢は、本当に何の変哲もない金魚鉢。
箱から出したそれを、ハルピンはしげしげと眺めた。
「はぁー、確かにどっからどう見ても金魚鉢だあね」
「いいでしょお?」
「ま、いいんじゃない?」
「何その興味なさそうな言い方……」
私がむすっとすると、ハルピンは「あんたねぇ」と呆れて笑った。
「それより、なんで学校に金魚鉢なんて持ってきてんのって話でしょーよ」
「何でって……諒くんにあげるから?」
「はい?」
「これ持って、諒くんの家に行くんだよ」
一瞬だけ間があって、それからハルピンは盛大に驚いた。
「ええっ!? 何、いきなりっ……」
「何その食いつきかた。金魚鉢にはぜんぜんだったくせに」
そりゃあまあ、当たり前だろうけど。
「溝口、彼家デートじゃん!」
「うん」
「“うん”ってあんた……」
「いや、わかるよ。ハルピンの言わんとすることはわかるよ、うん……」
私だって何も思わないわけないじゃない。
「あーもう、そろそろ先生来ちゃうじゃんっ。詳しい話は帰りに聞くから!」
「うん」
とりあえず今は時間切れ。
ハルピンからの尋問(?)は、帰りに約束していたファミレスランチの時間へ持ちこされた。