優等生の恋愛事情
「で、どういう流れで三谷の家に行くことになったわけ?」
「どうもこうも、なりゆきで……」
「はぁ?」
ここは駅から少し離れたところにある、ちょっと穴場なファミレス。
オフィスばかりのインテリジェントビルの中にあるせいか、学生や家族連れは少なめで。
知り合いに会うことがないのと、ドリンクバーが充実しているのが、ハルピンと私のお気に入りだ。
お昼のピークを過ぎた店内はわりと空いていて、案内されたのはゆったり座れる4人席。
注文を終えるやいなや、ハルピンの質問攻めは始まった。
「なりゆきってことはないでしょーよ!」
「とりあえずさ、飲み物とってこない?」
「はあ!? ま、そうね……うん」
飲み物とランチのスープを持ってくるとすぐ、ハルピンは続きを話し始めた。
「だから、なりゆきなわけないじゃんよ。三谷が誘うか、溝口が行きたがるかしないと、家デートなんて成立しないじゃん」
ハルピンの言うことはごもっとも。
「誘ってくれたのは諒くんからだよ、一応」
「まじか!」
「でも、金魚鉢を持って行きたがったのは私というか……」
「は?」
「だから、なりゆきなんだってば」
だって本当、自然といえば自然な流れだったのだ。
彼が強引に誘ったわけでもないし。
私が無理やりねだったわけでもない。
発端(?)は、夏祭りのときに二人でやった金魚すくい、なのかな???
私のうちは猫がいるからと、すくった金魚は2匹とも諒くんがもらって帰ってくれたのだけど。
彼の家には金魚鉢も水槽もなかったらしく。
とりあえず、おうちにある中で一番大きな鍋で飼っているって話をきいて。
だったら私が、お祖父ちゃんちから使ってない金魚鉢をもらってくるねって言って――。
「もらってきたから渡すねって言ったら、じゃあ金魚見に来る? って話になって……」
「で、二つ返事でOKしたわけだ」
「それは……うん」
正直、メッセージのやりとりをしているときは、あまり深く考えていなかったのだ。
“わーい、金魚鉢にお引越しする金魚たちを見せてもらおー”ぐらいにしか。
その重大さ(?)に気づいたのは、彼の家に行くことが決まったあとで。
“やっぱり無理”とか、あとから言うのもおかしい気がして……。