優等生の恋愛事情
どうしてそんなこと……質問の意図はどこにあるんだろう?

すごく、すごく気になる。

でも、なんだろう? 

それは聞いてはいけない気がした。

少なくとも、今は。

ハルピンから言わない限り、聞き出すようなことはしちゃいけない、そんな気がして。

だから、私は質問にただ真剣に答えた。


「一生懸命に待とうとしてくれると思うよ。ただ、なんていうか……“待ちきれるか”は、私にも誰にもわからないよね」

「そっか、そうだよね……」


ハルピンの表情が真剣というより深刻な気がして、私は何をどう言ったらよいか困ってしまった。

そんな私の気持ちを察したのだろう。

ハルピンは一転、明るい表情で言った。


「なんかへんなこと聞いてごめん。ありがと」

「ううん、ぜんぜん」

「あ、そうだ」

「へ?」

「私、見てみたいんだけど」

「何を?」

「動く三谷」


“動く”って、なんじゃそりゃ……。


「ハルピン。諒くんは生身の人間。私たちと同じ3次元に毎日生きてる」

「知ってるよ!って、挨拶したらすぐに退散するから!見せて見せて!」

「いや、見世物じゃないからね」

「お目もじいたしたく~」

「はいはい。わかったからもう」


根負けしたみたいな言い方をしたけど、本当は嬉しかった、諒くんにハルピンを紹介できることが。

諒くんも喜んでくれると思うし。

だって、私が彼にする学校の話の中で登場回数最多、一番の親友のハルピンだもの。


会計を済ませたあと、私たちは同じビル内にあるトイレに直行した。

さっきまでいた穴場のファミレスの唯一の難点は、店舗内にトイレがないところ。

でも、ビルのトイレはとてもキレイで、パウダールームまでついていて、おまけに着替え用の台まであるからすごい。

しかも、階を選べば空いてるし。

手早く歯磨きを済ませる私に、ハルピンは唐突に言った。


「ねえ、三谷が押し倒してきたらどうする?」


もう、何を言い出すかと思えば……。


「それは困るね。すごく困るよ」

「下着がうっかり上下バラバラだとか?」

「いや、勝負に関係なく上下いつもそろえる派だから。って……つまんないこと言わせないでよ、ハルピン」

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