優等生の恋愛事情
いきなりなんて、諒くんに限ってないとは思う。

そりゃあ、彼だって健全な男子高校生なわけで、絶対ないと言い切れるかと問われると……。

ただやっぱり、それでもないと思うのだ。

とりあえず、今はまだ……。


「万が一、三谷がいきなり襲ってくるようなことがあったら、股間に蹴り入れてやんな!私が許す!」

「わかったよ。万の万の万が一ね」


私が「そういう心配はないと思うけどね」と笑うと、ハルピンもまた「そうだろうけど」と朗らかに笑った。


「なんつうか、溝口と三谷の、二人の歩幅っていうの? 歩調っていうの? そういうのが一緒だといいね」

「だね」


私は親友の言葉をありがたく受け取った。


彼と私、ふたりのこと――。

もっと、近づきたい。

ふたりの関係を深めたい。

でも――。

いつ? どれくらい? どうやって?

それはカップルの数だけ、みんなそれぞれなんだろうなって。

だから――諒くんと私も、ふたりらしい感じを一緒に見つけていけたらいいと思う。


(諒くんもそう、思ってくれてるよね?)


彼から“電車乗ったよ”のメッセージがくるとすぐ、私は“今日は改札前で待ってるね”と返信した。

元々の待ち合わせ場所はいつもの本屋さんだったのだけど。

ハルピンが一緒なのは言わないでおいた。

ちょっとしたサプライズ、みたいな?


彼を待っている間、ハルピンはふいに言った。


「何も聞かないんだね、溝口は」

「え?」

「私、へんなことばっか言ってるじゃん。それなのに……」


私は正直な気持ちを伝えた。


「すごく気になってるよ、本当は。ちょっと心配もしてる」

「ごめん……」

「謝らないでよ。私、遠慮してるとかじゃないよ。ただ、今は無理に聞き出すとか、そういうタイミングじゃない気がしてるだけ」

「うん」

「だって、本当に助けが必要なら、ハルピンは私のこと頼ってくれると思ってるし」

「うん」

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