優等生の恋愛事情
出会いを求めて夏講に行くと意気込んでいたハルピン。

でも結局、収穫は英語と国語の成績が上がっただけだった、って……(それはそれで、かなり有意義だったと思うけど)。

友達はできたけど特別なことは何もなくて、勉強三昧で終わってしまったと言ってたけど。


「溝口」

「ん?」

「そのうち話すからさ」

「うん」

「そんときは聞いてやってくれる?」

「もちろん」


いつでも、どんな話でも。

私はハルピンの味方だもん。

ハルピンが私の味方であるように。


「あ、電車ついたんじゃない?」

「ほんとだ」


こういうとき、長身の彼氏ってとてもいいと思う。


(あ、諒くん!)


改札を出ようとする人波の中に、彼はすぐに見つかった。

すると、彼もこちらに気づいたようで。

諒くんは一瞬「あれ?」という表情をして、それからニコッと笑って、改札を出るとすぐ急いでこちらへかけてきた。


(急がなくても大丈夫なのに)


けど、彼はそういう人だもの。

そういう彼をやっぱりとても好きだと思う。


「急にどうしたのかと思ったけど、お友達と一緒だったんだね」

「うん。あ、ええと――」

「ひょっとして、ハルピンさん???」


私が紹介するより先に諒くんが言う。

興味津々というか、期待感満載というか。

そういう彼が可愛くて嬉しくて仕方がない。


「友達の池澤晴さんだよ。って、ハルピンの名前は今さらかもだけど」


瞬間、彼がぱっと笑顔になる。


「本物のハルピンさんだ!」


(本物って……)


まあね、今まではずっとお話の中の登場人物みたいなとこあったと思うし。

さらに、諒くんが諒くんなら、ハルピンもハルピンという。


「どーもー、池澤でーす」


挨拶、軽っ!!


「えーと、溝口の友達のハルピンです。偽物じゃなくて本物のね」

「ちょっと、ハルピン!」

「正真正銘、本物のハルピンさんか」

「諒くんも!」

「動く三谷が見られて嬉しいよ、うん」

「だからっ」


とりあえず、ふたりが初対面を喜んで楽しんで(?)くれたようで何より、かな?

諒くんは「せっかくハルピンさんもいるなら3人で遊びに行く?」と言ってくれたけど。

ハルピンは「用事があるからまた今度」って。

文化祭でまた会えるのを楽しみにしてるとだけ言って、予告どおり“退散”した。


「ごめんね。びっくりさせちゃった」

「でも、嬉しかったし。紹介してもらえて光栄というか」

「ならよかった」

「うん。じゃあ行こうか」


諒くんは肩にかけていたリュックをしっかり背負うと、私の手から紙袋をひょいと取り上げた。


「あ、いいのにっ」

「よくないよ。これ、女の子にはけっこう大変だったでしょ。あとは僕が持つから」

「じゃあ……ありがと」

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