優等生の恋愛事情
夏休みは一緒に遊んで勉強もして、とにかく会える時間をいっぱい作った私たち。
つい2、3日前だって「2学期始まるねー」なんて、会って話したばかりだもん。
だから久しぶりってことはまったくない。
慣れ親しんだ駅も、広い遊歩道を手をつないで歩くことも、いつもどおりのはず、なのだけど――。
なのに、すっごく新鮮な気持ち。
その理由は簡単だった。
「諒くんが制服のとこ見るの初めてだね」
もちろん、高校の制服という意味で。
夏休み中は、ふたりとも私服か、学校帰りの私だけ制服か、そのどちらかだったから。
「ネクタイとか、すごく新鮮な感じする」
「ああ、中学のときは学ランだったからね」
中学の男子の夏服って、味気ない白の開襟シャツだったっけ。
卒業してからまだ1年もたっていないのに、なんだかもうすごく昔のことみたい。
初めて見る高校の制服姿の諒くんは、すごく“彼らしい”感じだった。
「私の学校ってわりと制服をカジュアルに着てOKなんだけど。東雲ってきっちりした感じなんだね」
白いシャツがやけに眩しく見えちゃうくらい爽やかで。
紺地に小さなドット柄のネクタイは、結び目がとてもきれいに整っていて。
わたし的には諒くんのシャキッとした感じがかなりグッときた。
でも、諒くんによると今日は東雲生にとってちょっと特別な日だったみたい。
「僕の学校って基本的に自由放任なんだけど。制服に関しては妙な縛りがあってさ」
「校則ってこと?」
「そう。夏はポロシャツも選べるし、シャツも普段は白でも青でもいいんだけど。始業式とか終業式とか、絶対に白シャツとネクタイで!みたいな縛りがある日があるんだよ」
「そうなんだぁ。うちの学校はないなぁ」
「夏なんてネクタイしてると暑いし面倒なんだけど。まあ、ポロシャツ着てって揉めるのも、それはそれで面倒だし」
「で、みんな仕方なく校則を守るわけだね」
「いや、それがちょっと微妙で」
「へ?」
(それってどういう???)