優等生の恋愛事情
理科準備室は広くないのに、物がごちゃついていて――大きなゴミ箱がぶつかって、人体模型がバランスを崩してガシャンと倒れた。


(ど、どうしようっっ)


とりあえず、割れたりとか壊れたりはしていない(と思う)。でも……。


「これってどうしたら……」


(内臓、ぜーんぶ出ちゃったんですけど!?)


そういえば「中学校には似つかわしくないほど精巧で高価なものなのです」とか、理科の先生の誰かが言っていたっけ。


(と、とにかく戻さないと……うん)


私は理科で習った知識を一生懸命に思い出しながら、内臓をせっせとお腹の中に戻そうとした。でも……。


(ダメだ、余っちゃう)


おかしい、なぜか内臓がお腹におさまりきらないんですが……。

私、パズルとか嫌いなほうじゃないんだけどな。でも、立体なんて難しすぎだし。ついでに、理科ってあんまり得意じゃないし。


(はぁー。もう諦めて先生に謝りにいこうかな。わざとじゃないもん。でもなぁ……)


困り果てて、私はガックリとうなだれた。すると――。


(うそ!? 誰か来るっ!?)


こちらへ近づいてくる足音が確かに聞こえた。ここは廊下のずっと奥にあって、用事がない限り通る人なんていないはず。ってことは……先生!? 


「あれ? 溝口さん?」

「三谷くん……?」


現れたのは、同じクラスの三谷くんだった。

しかも、弓道着に上履きという格好の。

でも……なんで?


「顧問を呼びに来て戻るところだったんだけど。ちょっと気になって寄ってみたんだ。ほら、理科室の窓の閉め忘れがあったって注意されたばかりだから」

「あー、それでわざわざ」


(なんて真面目な……)

  
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