優等生の恋愛事情
ポテトやスイーツを奢られながら、私はコミ―に質問攻めにされた。
馴れ初めに始まり、お互いになんて呼び合っているか、他校だと週に何回会えるか、身長差はどれくらいか、いつもどんなデートしてるとか、親には彼氏がいることを言っているのか……などなど。
それにしても、コミ―と恋愛の話をしているなんて。
しかもウル君まで一緒にいて、そのウル君がコミ―の彼氏なのだから。
文化祭で呟いた「羨ましい」の意味を、今日こうして知ることになるなんて思いもしなかった。
「そういえば、コミ―って学校ではあんまり恋バナにまざってないよね?」
「まざれないから」
「え?」
「だって、まざったら自分の話もしなきゃってなるじゃない? でも、できないし」
「確かに」
「だから、今すっごい嬉しいんだよね」
「そっか」
(学校が同じなら毎日会えるけど、一緒だからこそいろいろ気を遣うこともいっぱいあるもんね)
「あのね、卒業するまでずっと内緒なの?」
「ううん。2年になったらクラス替えで文理に分かれるでしょ? 朔は理系で私は文系でクラス別になるから。そしたらもういいかなって」
「そうなんだ? けど、部活は? 部活内恋愛とかって大丈夫なの? 人間関係たいへんそうだけど」
「うん。あっちはぜんぜんいいの。基本的にドロドロだから」
「え?」
「他の学校は知らないけど、ウチの吹部は恋愛がらみも含めて人間関係の揉め事が超多くて。だから、つき合ってるってバレてもザワつかれるのは一瞬かな。すぐに次のホットワードが浮上するから。まあ同じパートならちょっと練習で気まずいかもしれないけど。私はフルートで朔はホルンだし」
吹部がまさかそんな感じだなんて……。
のどかな囲碁部とは大違い。
私がいろいろ知らなすぎなのかもしれないけど、とにかくびっくりした。
「ねえねえ、溝ちゃん聞いてよー。吹部の男子ってね、ある日突然モテだしたりすんのよ」
コミ―は横目でちらりとウル君を見ながら言った。
「楽器が上手くなったり、そんでもってソロを任されたりするとね、株が急に爆上がりしたりすんの」
「それって、吹部あるあるなの?」
「そっ。あーあ、心配だなぁ。朔も急にモテ出したりしたら、私のことなんて……」
「なっ……いきなり何だよっ」
あらら……。
本人には悪いけど、思い切り動揺するウル君がちょっとおもしろい。
「ホルンって、女の子と二人きりでパート練習のときもあるかもだし? あーあ、私は不安で夜も眠れないわ」
「薫、おまえなぁ……」
ウル君を困らせて嬉しそうにしてるコミ―がすごく可愛い。
コミ―のことを見てるときのウル君も、すっごい優しい顔してるし。
(ああ、どうしよう。諒くんに会いたくなっちゃったな……)