優等生の恋愛事情

ファミレスを出る頃には夕方になっていた。

「すごい焦ったけど、バレたのが溝ちゃんでよかったわ。巻き込んでホントごめんだけど……」

コミ―がハルピンと同じように私を信頼してくれてるのが、すごく嬉しい。

「秘密は守るから」

学校では絶対に誰にも言わないし、私のせいでバレたりしないように態度にも気をつける。

(でも……)

「あのね、その……彼には言ってもいいかな? っていうか、すごく言いたくて……」

諒くんが「ふたりはつき合っているの?」と指摘していたことを話すと、コミ―とウル君は顔を見合わせて苦笑した。

「俺らもつめが甘いな」

「彼氏さん、恐るべしだわ」

コミ―もウル君も「やれやれ」「あーあ」と言いながら、なんだかどこか嬉しそう。

まあ要するに“お似合いでいい雰囲気”に見えたってことだもんね。

「そのうちさ、俺らと溝ちゃんと彼氏さんと、4人で遊び行けたりとかできたらいいな」

「うん」

そうして、私たちは「また学校でね」と笑顔でバイバイした。

(諒くん、どうしてるかなぁ)

ちょっと迷ったけど……やっぱり連絡してしまった。


待ち合わせの公園へやって来た彼は私服姿で、手には5箱組のボックスティッシュを持っていた。

「すごいタイミングでびっくりしたよ。ちょうど近くで買い物してたから」

「ごめんね、お買い物の途中だったのに」

「平気だよ、もう済んだから」

「あ、冷凍品とか冷蔵品とかない!?」

「大丈夫。お菓子と雑貨と胃腸薬だけ」

「ならよかった」

私が「ほっ」とした顔をすると、彼は楽しそうに笑った。

「いいよね、聡美さんのそういうところ」

「そういうって……どういう???」

「そういうは、そういうだよ」

彼が手を取って「少し歩く?」と聞いたので、私は頷いて、いそいそ隣に並んだ。

手をつないで公園を歩きながら、今日学校であった出来事を話した。

「諒くんの勘ってすごいね。ウル君もコミ―もびっくりしてたよ」

「漆原君と小湊さん、クラスも部活も一緒だなんて羨ましい気もするけど。大変なんだね」

「今のところ内緒だからね。あ、そのうち4人で遊んだりできたらいいね、って」

話しながら、音楽室で見た光景が頭をよぎる。

秘密の恋は、甘くて切なくて。

動けなくなるほど、甘酸っぱさで胸がきゅうっとしめつけられた。

そうして、私も……“好きな人”に会いたくなった。
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