優等生の恋愛事情
なんだかんだで、
渡り廊下を通って隣の校舎まで連れてこられた。


「で、用事って何かな?」

(用件はおそらく“あのこと”なんだろうけど。なんでこんなとこまで?)


理科室と被服室しかないこの階は静かすぎるくらい静かだった。


「あのさ、溝口さんにもクラス会の連絡きたでしょ?」

(あー、やっぱりその話)


高崎君とは中学で2年3年と同じクラスだった。

そして、同じ中学からこの桜野に来たのは彼と私の二人だけ。

クラス会をやろうという連絡がまわってきたのはつい昨日のことで、高崎君がわざわざ私に話しにくるとしたら、そのことしかないと思ってた。


「でさ、溝口さんに折り入って頼みたいことがあって」


いかにも申し訳なさそうな表情と低姿勢。
でも、こっちだって想定内だもんね。


「ダメだよ。私、行かないから。何も協力できないから」

「ええっ!なんで!?ちょっと待ってよ~」

「待ちません」


どうせまた
面倒な仕事を押し付けようとか?
そういう話に決まっている。

女子側の幹事をよろしく、
もちろん連絡から会計まで全部ね、
みたいな?


「私、もうクラス委員じゃないし。幹事は言い出した人がやったらいいでしょ」

「は? 何の話?」


きょとんとする高崎君に、私は思い切り疑いの眼差しを向けた。


「だって、連絡調整とか会計とか面倒だから押し付けようって……」

「ああ、違う違う」

「じゃあ……?」

「お願い!岩本さん連れてきて!」

「はあ!?」

(岩本さんて、同じクラスだった岩本さんだよね???)
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