優等生の恋愛事情
三谷くんにとても会いたいと思った。

臆病な気持ちが完全に消えたわけじゃないけれど、今はもうずっとずっと会いたい想いのほうが上だった。


「楽しみだよ。すごく楽しみ」

「溝ちゃんのその気持ちをさ、三谷氏に伝えてやんなよ。たぶん、すっげードキドキしながら来るんだぜ? だからさ、会うの楽しみだったって、ちゃんと言ってやんなよ」


澤君は「男友達からのお願い」と言って笑った。



夕方、待ち合わせをした本屋さんへ行くと、学参コーナーにいる三谷くんをすぐに見つけた。


(早く来て待っててくれたの???)


時間に正確な三谷くんらしいといえばそう。でも、やっぱり嬉しい。

私は逸る気持ちを抑えられなくて。

だけど、店内を走るわけにもいかなくて。

本屋でモーレツに早歩きする不審な女子高生になってしまった……。


「ごめんねっ、たくさん待たせちゃった?」

「僕が勝手に早く来ただけ。溝口さんは時間どおりだよ」


三谷くんはふんわり微笑むと、手に取っていた本を棚に戻した。


「私、その英単語集やってるの」

「僕も持ってるよ。すごく使いやすいよね」

「うん」

「ひょっとして、英熟語も持ってる?」

「うん」

「僕も。じゃあ、どっちもお揃いだ」

「うん!」


(お揃いって聞いただけなのに、はしゃぎすぎ? 私、おかしい???)

  
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