優等生の恋愛事情
三谷くんが卒業と同時に引っ越していた、というのを知ったのはクラス会のときだった。

しかも、私が通う桜野高校のわりと近くだったなんて。


「三谷くんが桜野だったらチャリ通で楽々だったね」

「そうだね」


本屋さんを出た私たちは、最近整備されたばかりという大きな公園を歩いていた。


「ここの公園って駅周辺の再開発に伴って整備されたんだって。巨大なマンション群があるでしょ? 僕が今住んでるのもあの辺」

「そうなんだね。私が電車通学だったら、駅で会うこともあったかもだけど」

「バス通学とは想定外だったよ」


私は自宅の最寄りにあるバス停からバス一本で通学している。朝はお父さんの車に便乗することも多いし。


「僕、驚くほど会えないから軽く落ち込んだりしてさ。よっぽど縁がないのかなって」

「ええっ」

(三谷くん、そんなに気にしてくれてたの???)

「あ、断じて待ち伏せみたいなことはしてないからね。なんていうかほら、それをやったら最後というか、何かが終わっちゃう気がして」


照れたように笑う三谷くんに、きゅんと胸がときめいた。

他の誰かじゃなくて、
私に会いたいって思ってくれた。

私を“特別”って思ってくれた。
私のことを、三谷くんが――。

(嬉しいのは、三谷くんだから。私にとって三谷くんが“特別”だったから……)

  
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