優等生の恋愛事情
私はどうにもタイミングをつかめずにいた。

三谷くんはさらさらーっとしていて、私がよく知っている落ち着いている三谷くんって感じで。

返事の催促をしてくるふうでもなくて。


(ああ、どうしたら……)


気持ちを伝えるって、なんて勇気が要るんだろう。

でも、三谷くんはもっともっと何倍もの勇気を出してくれたんだ。

だから、私も――。


「あ、あのっ」

「うん?」


立ち止まることも、まっすぐに見つめることもできない。

こんな卑怯で臆病な私を三谷くんは許してくれますか?


「私……」


肩が腕に触れそうで、触れなくて。

とてもとても近いのに、だけどやっぱり遠い距離。

並んで歩きながら、私はなけなしの勇気を振り絞った。


「今日、今日ね……三谷くんに会えるの楽しみだったの。すごく……すごく楽しみだった」


(言えた? 言えてた? 言っちゃった?)

  
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