優等生の恋愛事情
中学の頃、テスト前ともなると三谷くんの周りは「勉強教えてー」の人たちが群がって大賑わい(?)になっていた。
でも――。
(考えてみたら、私って三谷くんから勉強教わるとか初めてじゃない? 私が教えたこともないけど……)
彼を囲む賑やかな輪の中に私はいなかった。
それに、女子の中には私に教わりにくる人もいたけれど、三谷くんがそういうことで私に声をかけてくることはなかったし。
「数学、どのへん?」
「えっとね、因数分解なんだけど――」
私は問題集のページを開くと、閉じないようにぐぐっと強く折り目をつけた。
「この問5の最後のやつなんだけど、どうしてもよくわからなくて」
「どれどれ」
私たちは気持ち身を乗り出すような格好で1冊の問題集を一緒に見た。
ちょうど、ファミレスの広々テーブルで1つしかないメニューを一緒に見ているみたいな感じ?
「あー、小さいxの二乗を大きいXに置き換える問題だけど、ちょっとひねりが入ってるのか」
「ひねり?」
「そう。いじわる問題」
「むむむ、いじわる問題……」
「でも、パターンがわかれば大丈夫」
三谷くんがふんわり笑う。
(あぁ、この笑顔)
この笑顔にいつも救われていたんだ。
安心と勇気と、ときには自信さえも与えてくれる。まるで魔法みたいな優しい笑顔。
その笑顔を独り占めしている今この瞬間が、やっぱり不思議で夢みたい。
「でね、まず初めに着目しなきゃいけないのは――」
三谷くんはルーズリーフを1枚取り出すと、さらさらと計算式を書き始めた。
(相変わらずキレイな字だなぁ)
よく知っている彼の文字を、私は懐かしく見つめた。もちろん、真剣に説明を聞きながら。
「ここで気をつけなきゃいけないのが――」
三谷くんは書き終えた数式にさらにポイントを書き加えながら丁寧に説明しようとしてくれた。
でも――。
(なんか、ちょっとやり辛そう……)
そもそもテーブルが大きすぎるのだ。
向かい合って座ると互いにちょっと遠いくらい?
それでも、三谷くんは私が見やすいようにと気を遣ってくれるから、何かこう体勢がぎこちなくて辛そうで。
すると、やっぱり限界があったらしく……。
「ごめん」
「えっ」
「隣、行ってもいいかな?」
(ええっ)
でも――。
(考えてみたら、私って三谷くんから勉強教わるとか初めてじゃない? 私が教えたこともないけど……)
彼を囲む賑やかな輪の中に私はいなかった。
それに、女子の中には私に教わりにくる人もいたけれど、三谷くんがそういうことで私に声をかけてくることはなかったし。
「数学、どのへん?」
「えっとね、因数分解なんだけど――」
私は問題集のページを開くと、閉じないようにぐぐっと強く折り目をつけた。
「この問5の最後のやつなんだけど、どうしてもよくわからなくて」
「どれどれ」
私たちは気持ち身を乗り出すような格好で1冊の問題集を一緒に見た。
ちょうど、ファミレスの広々テーブルで1つしかないメニューを一緒に見ているみたいな感じ?
「あー、小さいxの二乗を大きいXに置き換える問題だけど、ちょっとひねりが入ってるのか」
「ひねり?」
「そう。いじわる問題」
「むむむ、いじわる問題……」
「でも、パターンがわかれば大丈夫」
三谷くんがふんわり笑う。
(あぁ、この笑顔)
この笑顔にいつも救われていたんだ。
安心と勇気と、ときには自信さえも与えてくれる。まるで魔法みたいな優しい笑顔。
その笑顔を独り占めしている今この瞬間が、やっぱり不思議で夢みたい。
「でね、まず初めに着目しなきゃいけないのは――」
三谷くんはルーズリーフを1枚取り出すと、さらさらと計算式を書き始めた。
(相変わらずキレイな字だなぁ)
よく知っている彼の文字を、私は懐かしく見つめた。もちろん、真剣に説明を聞きながら。
「ここで気をつけなきゃいけないのが――」
三谷くんは書き終えた数式にさらにポイントを書き加えながら丁寧に説明しようとしてくれた。
でも――。
(なんか、ちょっとやり辛そう……)
そもそもテーブルが大きすぎるのだ。
向かい合って座ると互いにちょっと遠いくらい?
それでも、三谷くんは私が見やすいようにと気を遣ってくれるから、何かこう体勢がぎこちなくて辛そうで。
すると、やっぱり限界があったらしく……。
「ごめん」
「えっ」
「隣、行ってもいいかな?」
(ええっ)