優等生の恋愛事情
◇憧れの名前呼び?
「溝ちゃん、最初が肝心なのよ!」
瀬野ちゃんは言った。
「まあなぁ、タイミングはあるかも」
澤君も言った。
そしてさらに、瀬野ちゃんは声を大にして言った。
「そう!タイミングを逃すと大変なことになっちゃうんだから!」
(大変なことって……)
ぬっと身を乗り出して力説する瀬野ちゃんの勢いが半端ない。
私は完全に圧倒されながら、おずおずと聞いた。
「そ、そういうものなの?」
「そういうものなの!」
夏休みとだというのに、またまた学校に来てる。
でも、今日のメインは文化祭の準備じゃない。
うちの学校には、サマースクールという夏休みに開講される希望者向けの授業がある。
予備校へ行くハルピンは不参加だけど、瀬野ちゃん、澤君、私の3人は参加組。
3学期にあるホームステイ向けの「英会話」も開講されている授業の1つ。
今日の英会話は午前と午後のお昼を挟んだ2コマあって、同じ授業をとっている私たちは、仲良く昼休憩をとっていたのだけど――。
「溝ちゃん、ホントに今のうちになんとかしないと!一生“溝口さん”って呼ばれることになるんだからね!」
「おいおい、一生は大袈裟じゃね?」
「澤君は甘いわ!」
「す、すんません……」
「瀬野ちゃん、何もそんなっ」
「溝ちゃんは危機感足りなすぎ!」
「ご、ごめんなさいっ」
瀬野ちゃんの迫力に「ひぃぃぃ」と小さくなる澤君と私。
(ああ、瀬野ちゃん完全に熱くなってるよ)