優等生の恋愛事情
いきなり話を振られて、ちょっとたじたじの私。

(瀬野ちゃん、必死に泣きそうなのを我慢してるんだよね)

私と澤君のまえなんだから、泣いてもいいのに。

けど、涙を見せまいと必死の意地っ張りの瀬野ちゃんが、なんだかとってもかわいかった。


「溝ちゃんだって、カレに“聡美”って呼んで欲しいでしょお?」

「えっ、それは……」

「女子なら憧れて当然だもん、名前呼び」


うんうんとうなづく瀬野ちゃんをよそに、私はちょっと……戸惑っていた。


「カレだってきっと思ってるよ!溝ちゃんのこと、“聡美”って呼びたいに決まってるよ」


三谷くんが私を「聡美」と呼ぶ……。

私のことを「聡美」と呼ぶ三谷くん……。


(ど、どうだろう……???)


「ねえねえ、カレの下の名前ってなんていうの?」

「諒、だけど……」

「じゃあ、溝ちゃんだってカレのこと“諒”って呼びたいよね?」


私が三谷くんを「諒」って呼ぶ?

三谷くんのことを「諒」って呼ぶ私???


「あー、もう!私なんて、カレが私のこと“彩華”って呼ぶの想像しただけでドキドキしちゃう」


自分で言いながら「キャーッ!」とひとりで盛り上がる瀬野ちゃん。

怒ったり、泣いたり、うっとりしたり。

恋って女のコを忙しくするものなのだと、つくづく思う。

私だって……三谷くんのことを考えるとドキドキするもの。


(けど、どうなんだろう……?)


三谷くんは名前のこととか気にしてるのかな?

私のこと、“聡美”って呼びたいと思ってる?

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